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チェコの名曲紹介コーナー |
|   | 平井秀明さんの楽しい解説と共に、チェコの名曲に親しんではいかがですか。まずは、皆様ご存知の「新世界」から、チェコ音楽の美しい世界へとご案内しましょう! ★平井秀明さん直筆のエッセイ、名曲解説、Q&Aコーナーなどは、当後援会会報「AKI’S PRESS」にて好評連載中!ファンクラブご入会詳細は「後援会情報」ページをご覧下さい。
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 「新世界より」 ドヴォルザーク( 1841-1904 )が生涯に残した九つの交響曲の最後であり、クラシックのレパートリー中、最も多く演奏され、又幅広い聴衆層に愛されてきた名曲の一つである。 1892 年 9 月、ドヴォルザークはニューヨークのナショナル音楽院の第 2 代学長として招かれ渡米、そしてその翌年にこの交響曲が誕生した。いわば“ Made in U.S.A.” であるが、本質的には「新世界より」という表題(当時欧州では南北アメリカや豪州のことを「新世界」と呼んでいた)から察せられるように、自然に囲まれた祖国ボヘミア(現在のチェコ共和国)へ寄せられた望郷の念がいっぱいに込められたドヴォルザークのアメリカ便りである。 チェコは現在でものどかで美しい自然に恵まれているが、田舎育ちの作曲者にとってニューヨークでの新生活はきっと大きなカルチャー・ショックを与え、故郷を懐かしむ思いもより一層募った事であろう。 初演は 1893年12月16日 にニューヨークのカーネギー・ホールでアントン・ザイドル指揮ニューヨーク・フィルハーモニックによって行われ、ヨーロッパ初演は、イギリス初演の直後、チェコ西部の有名な温泉保養地であるカルロビ・ヴァリ交響楽団(アウグスト・ラビツキー指揮)により行われた。後者は大変光栄にも私がヨーロッパ・デビューの際指揮した楽団でもある。 私の個人的イメージとしては、 第 1 楽章 冒頭の幻想的なメロディーは、まるでドヴォルザークが朝靄のかかった海に向かい故郷に思いをはせ、その後突然押し寄せるオーケストラのフォルティッシモが大都会ニューヨークの喧燥を象徴し、彼を現実の世界に引き戻すかのように想えてならない。約 10 年前、ニューヨーク近郊へと渡米した私自身の思い出と、どこか重なり合う気分である。 ドヴォルザークはアメリカ・インディアンの民謡や黒人霊歌に強い興味を示したことから、全楽章を通じてそれらの影響が多く見られ、ボヘミアの民族色と巧みに融合している。 第2楽章 の黒人霊歌風のテーマはイングリッシュ・ホルンのソロで奏され、その後ドヴォルザークのアメリカでの弟子、フィッシャーによる歌詞が付けられ、「家路」という題名で我が国でも親しまれている。この哀調を帯びた有名なテーマであるが、実はロングフェローの詩「ハイアワサ」に出てくる“インディアンのお葬式”から、更に 第3楽章 は同じく“インディアンの森での祝宴”からインスピレーションを受けて作曲されたそうである。冒頭では勇ましく、また中間部では優しく鳴り響くトライアングルも、確かに踊りの雰囲気を醸し出しているのかもしれない。 第4楽章 は荘厳な第1テーマがトロンボーンやトランペットで現れ、やがてクラリネットの田園風でのどかな第2テーマとチェロの活き活きとした対話のシーンへと導いてくれる。その掛け橋ともいえる箇所で、シンバルが全曲を通してたった1回(!)のみ奏される点は非常に興味深い。シンバルといえば ff でバーンと派手に、といったイメージが多いが、ここでは控えめに mf でシャーンといった具合である。例えれば、ドヴォルザークが目の当たりにしたニューヨークの喧騒から、このシンバルの合図一つで、のどかな自然に溢れたチェコの田園風景の拡がる、夢の世界へと 誘 ( いざな ) うといった感じであろうか。 終楽章では各楽章のテーマの断片が、思い出に浸るように時々回想され、やがてクライマックスを迎えるが、意外なことに最後のコードが突然消えるように静かに曲を結ぶ。(余談であるが、この最後のコードを延ばす<フェルマータ>長さについて、往年のチェコの名指揮者ヴァーツラフ・スメターチェクは、“(ハーモニーの)音程が良ければ長く、悪ければ短く!”と語ったそうである。)まるで水平線の彼方にチェコを想い、夕日に照らされ独りたたずむドヴォルザークの姿が、フェード・アウト効果の様に消えて行く、、、そんな映画のラストシーンを見ているような気にさせられる。あたかも彼のニューヨークでの「夢日記」が描かれているかのように。。。 〜〜〜以上、 平井秀明ファンクラブ会報「 AKI'S PRESS 」( Vol. 1) より転載
チェコ国民主義音楽の父とも称されたスメタナは、その強い愛国心に基づき連作交響詩『わが祖国』を作曲した。この作品は全 6 曲からなり、構成は次のようになっている。第 1 曲『ヴィシェフラート(高い城)』第 2 曲『モルダウ』第 3 曲『シャールカ』第 4 曲『ボヘミアの森と草原より』第 5 曲『ターボル』第 6 曲『ブラニーク』。この中で最も有名なのが第 2 曲『モルダウ』であることは言うまでも無いが、他の曲も大変すばらしいので是非お聴きいただきたい。毎年スメタナの命日( 5 月12日)に開幕する『プラハの春』国際音楽祭では、その初日に『わが祖国』全6曲をチェコ・フィルハーモニーが演奏するのが慣わしとなっている。余談ではあるが、スメタナとはチェコ語で『クリーム』のことで、チェコのカフェのメニューにも欠かせないアイテムである。 第 2 曲『モルダウ』 :冒頭のフルート 2 本が河の源流を、そして弦楽器とハープのピツィカート(弦をはじく奏法)は山奥の岩石から滴り落ちる僅かな水滴を表し、2本の糸のような河の誕生を見事に描いているのである。やがて2つの流れが合流し、あの有名な哀愁を帯びたテーマが登場し、まるでクルーズ・ツアーのように聴き手に河沿いの情景を次々と見せてくれるところは実に見事である。 まず初めにホルンの勇ましい4重奏による『森の狩』の場面、そして『農民の結婚式』の模様を象徴する軽快な踊りへと続く。水上の旅が進むと共に踊りの賑わいも遠のき、楽器も次第に減り、ファゴット、チェロ、コントラバスといった低音楽器のみとなり静かな夜の訪れを告げる。 さざ波のようなフルートとオーボエ、柔らかいヴァイオリンが奏でるメロディー、そして極めつけはエレガントなハープの音色が合わさって、『月夜に舞う水の妖精』の美しいシーンで、私が初めてチェコを訪問した際に夜のプラハ城をモルダウ河の対岸から眺めた時の感動を思い起こさせるようである。多くの訪問客が口をそろえて『プラハこそが世界一美しい街だ!』と感嘆するゆえんはここにあるのかもしれない。『百聞は一見に如かず』を体感したのもこの時だった。 やがて朝の到来と共に曲は始めのテーマへと戻るが、今度は『聖ヨハネの急流』に直面し、激しい流れの様子が荒れ狂う波のような弦楽器群や暴風の如き管楽器群に迫力一杯の打楽器も加わり、オーケストラの爆発的エネルギーを存分に味わうことができよう。 そして、ついに大河となった流れはプラハに辿り着き、ここで第1曲『高い城』のテーマが再現され、モルダウ河沿いの高台にかつてそびえていた古城を描写する。現在ではスメタナやドヴォルザークも眠る墓地のある高台(ヴィシェフラート)と、その脇に堂々と腰をすえるプラハ城を頭の中で重ね合わせ、在りし日の栄光を味わうのも旅の楽しみでもある。最後に、『わが祖国』を完成した頃には、不幸にもスメタナは聴覚を殆ど失っていたことも付け加えておきたい。 〜〜〜以上、 平井秀明ファンクラブ会報「 AKI'S PRESS 」( Vol. 5) より転載
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